ステロイド軟膏って危ないの?

たまに、赤ちゃんにステロイド軟膏を塗るのが怖い、嫌だという人がいますね。

なぜそういう人がいるのか、いつも通り分かりやすく解説してみます。

発端は、1990年代に大きな影響力がある番組で、「ステロイド軟膏は副作用が怖い、塗るからアトピーが治らないんだ!」、って放送されたことがあったのです。またそれに便乗する業者や医師までいたのも事実です。

↓この番組。ニュースステーションって言うのですが、若い人は知らんかな?



今の報道ステーションの前の前の番組です。久米さん(写真の人)は嫌いじゃないが、この放送はひどすぎる。ステロイドを塗らずにめちゃくちゃになった皮膚を、ステロイドの副作用だ!って断言してんですから、びっくりです。大手マスコミの報道でも、こと健康問題では、明らかな過ちとか誤解があります。この番組見て不幸になった人は数知れずいるでしょうね。

当時はアトピーの原因とかメカニズムがよく分かってませんでしたし、いつまでも治らない、軟膏を塗るのって正直言って面倒でしょう。ずっと軟膏を塗り続けないといけないのか!って思いが、こういった番組をきっかけにして、反ステロイドと呼ばれるカルト集団を作ってしまったわけです。いわゆる疑似科学です。

当院周辺にも“はまってる”人もいますが、危ない宗教みたいなものなのでお勧めしませんよ。ステロイドによる治療を拒否して、死亡した赤ちゃんも何名かいるはずです。わたしも亡くなりかけた赤ちゃんに関わったことがあります。皮膚はめちゃくちゃひどかった。。。


※カルトや宗教って人の命や健康よりも教義(自分たちが信じるもの)の方が大切だってことになりがちなんです。大昔から宗教戦争ってあったでしょ。今も世界中で過激思想の方がテロリズムを起こしています。命が惜しくない人ってものすごい戦闘力になります。


ちなみに、日本史最強の人、織田信長が一番苦戦したのは?





答え)石山本願寺(今の大阪城)のお坊さん軍団です。石山本願寺は浄土真宗のお寺ですが、当時、祈るだけで極楽浄土に行けるってことですごい勢力でした。信仰のために戦うのってすごい。



あと、擬似科学はもっと人を殺します。
歴史上、擬似科学による俺さま理論で、たくさんの人が殺されました。
中で一番有名な人は?







答え)ヒットラーです。

人種隔離政策は、ダーウィンの進化論を恣意的に曲解したものでしたね。
力のある政治家が疑似科学を信じると危ないですよ。今も時々見かけます。
気を付けましょう。




えらく話がそれた。戻します。


今ではアトピーの原因とか、アレルギーのメカニズムがかなり詳細に分かってきました。アトピーはもともと肌の弱い遺伝的な体質がある上に、皮膚の細菌バランスが崩れてしまってる状態です。乳児湿疹も原則は同じです。免疫の成長期にある赤ちゃんでそんな状態が続くと、悪い細菌バランスが固定化してしまい、アトピー性皮膚炎を発症します。

↓悪い細菌バランスの例


虫歯菌って知ってますか。小さいころに虫歯菌がうつると、口の中にずっと住むことになって、将来の虫歯の原因になります。胃の中に住んでガンの原因になるピロリ菌もそうです。赤ちゃんの頃に住み着いた悪玉菌は、将来にわたって影響があるのです。アトピー性皮膚炎は、皮膚の上でそれが起こっている状態だと理解してください。

写真のような肌にステロイド軟膏を塗ると、皮膚の悪玉菌が起こしている“炎症”を抑えるので、細菌バランスが正常化します。
※当院では皮膚の培養検査で悪玉菌を確かめながら診療しています。

ただし、軟膏の効果は一時的なものです。遺伝的に皮膚が弱い(アトピー素因が強い)子ほど細菌バランスが崩れやすいので、軟膏を塗らないとまた再発してしまいます。少なくとも生後6ヵ月くらいまでは、まめに塗ってあげて下さい。ほとんどはきれいになります。その後もできるだけ1歳くらいまでは頑張りましょう。赤ちゃんが小さいほど塗るのは簡単ですよ。1歳を過ぎると動き回るし大変です。

なお、皮膚が弱い体質は遺伝ですので治せません。皮膚を取り換えろって、どう考えても無理でしょ。ただ、細菌バランスの崩れは生まれてから二次的に起こるものなので、軟膏でコントロールできます。当院のアレルギー予防のプログラムで治療した赤ちゃんで、ひどいアトピーを発症した子や食物アレルギーになった子はいません。ただ、もともと肌が弱いので乾燥肌にはなっちゃいます。現代の医療の限界です。すいません。

※小さいころステロイドを使わずに頑張った、ってお子さんも何人か通院されていますが。。。ウーン、やっぱり残念な皮膚です。一見皮膚は治ってるように見える子でも、触れると皮膚の質は明らかに悪いし、アレルギーも明らかに強いですね。赤ちゃんのころから当院にかかってたら、多少なりともQOLが上がったのに、、って残念に思います。


ステロイドの副作用ですが、指示通り塗って頂ければ、ほぼ安全な薬です。もっとも気をつけないといけないのは、目の周囲に強い軟膏を塗ると眼圧が上がる可能性がある、ってことでしょうか?ですので、目の近くは気を付けて下さい。それ以外は、、、うーん、いろいろ考えても、ひどい副作用は経験ありません。たまにあるのは、カンジダ皮膚炎を単なるおむつかぶれと思ってステロイド軟膏を塗ると、悪化させちゃうことくらいです。
※ステロイドは皮膚の真菌(カビ)への抵抗力を落とすためです。なお、この場合も適切に対処すれば、あっという間にリカバーできます。

ところで、お子さんに抗生物質を飲ませたことありますか?または風邪薬は?
子どもにとっての有害度を比較すると、抗生物質>>風邪薬>ステロイド軟膏です。


当院は昔から抗生物質を処方しないことで有名?らしいですが、これはやたらと抗生物質を飲ませると赤ちゃんの将来の病気が増えるからです。一方で、ステロイド軟膏は、赤ちゃんの将来の病気のリスクを下げることにつながります。予防接種や健診で来院された際も、これは!と思う赤ちゃんには治療をお勧めしてます。怖がらずに塗ってあげて下さい。

繰り返しになりますが、反ステロイド(ついでに反ワクチンも!)の方々は、擬似科学を信奉するカルト集団です。成人は自分の健康のことなんで仕方ないと思いますが、赤ちゃんは将来があるし、お母さんは赤ちゃんの未来に対して責任があります。はまるのは避けてくださいね。


以下、反医療カルトについて

疑似科学をベースにしたカルト的考えは、反ステロイドとか、反ワクチン、その他妙な自然食思考の人々など、いろんなところにいますね。そういうのにはまっちゃうお母さんって、不安の強い人です。そんなに不安がらなくっても良いですよ。

今の世の中で育つ赤ちゃんは、有史以来もっとも健康で病気や怪我の危険も少ないのです。実際、乳児死亡率は100年前に比べると100分の1になってます。ちゃんとした医療や福祉を受けられれば、安心して子育てを楽しむことができますよ。


ステロイド軟膏は塗りません、ワクチン要りません、とか、ガンの治療は必要ない、とか、発達障害は〇〇で治る、ってネット探せばたくさんヒットしますけど、そのすべてがカルト的疑似科学です。はまってしまうと、楽しい子育てがオワコンになって、経済的にも搾取されることになります。こういう情報にのせられてしまうのが今のお母さんたちの最大のトラップかな。十分に気を付けて下さい!

成人のアトピーでステロイドを使わないというのは、否定はしません。子どもと違うので、本人が痒みとかQOLの低下を受け入れるのであれば、その意思を尊重します。ただ、使わないって決めてしまえば、症状のコントロールが困難だし、日常生活がつらいとは思います。カルト的に「使わない」って思いこまない方が良いのは確かですね。

なお、ステロイドを塗るからアトピーが治らない、というのは反ステロイドカルトが作った迷信(疑似科学)です。そんなデータ世界中どこにもありません。
そんなこと言われたら、せっかくお子さんのために一生懸命やってるお母さんの苦労を踏みにじっているようなものです。事実は逆で、ちゃんと治療してる方がお子さんの将来は良くなるんです。頑張って下さい。


※カルトにはまりかけた方、早い目に当院を受診してください。ただし、がっつりはまっちゃった方は受診されても無理かな。カルトは宗教と根っこは同じものですので、抜け出すのは自ら考え方を変えないといけないのです。
このHPを多少なりとも参考にして下さい。


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