舌下免疫療法について

アレルギーの治療ができることはご存じでしょうか?

今の時代で生活していると、様々なものに対してアレルギーを作ってきます。
すぐに鼻が出たり、目が痒くなる方も多いと思います。

日本でもっともアレルギーの原因になりやすいのは?



ダニです。続いてスギ花粉です。

ダニってどこにいるの?って思われるかもしれません。実は、普通のダニは肉眼で見えますが、アレルギーの原因になるダニは目に見えないくらい小さいのです。(名前はヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニです)。

これらのダニは多少はどんな家の中に住んでいて、生きている限り糞を出し続けます。ダニの糞は非常に小さく、乾くと舞い上がっています。それを吸い込むことでアレルギーを起こすのです。

ここから引用

スギは春のアレルギーとして有名ですね。動物と同じで、植物もおしべがめしべに受粉させることで子孫を作ります。庭に咲いている花は、虫(や鳥)を利用して受粉させます。そのために、わざわざ目立つ花を咲かせるのです。

スギのおしべは風で花粉をまき散らして、めしべに受粉させます。これを風媒花と言います。虫の助けを必要としないので、わざわざきれいな花を咲かすことはしません。スギの花って見たことないでしょう。目立たない地味な花です。

スギの花粉は細かく、風にのると何十キロも飛ぶことが分かっています。だから都市部に住んでいても飛んでくるのですね。

  ここから引用


近くの山に登ったことがありますか?自然に生えた木なんてほとんどありません。みんな戦後に植林されたスギやヒノキです。材木にするためです。

自然林の残っているのはきれいな紅葉が見えるんですけどね。

下の写真、吉野の大峰山に登った時のものです。左は自然林、右は人工林です。くっきり分かれてますね。都市部に近い山で自然林が残っているところはほとんどありません。残念ですが。。






家の中にいるとダニ(の糞)を吸い込む、春になると山からスギ花粉が飛んでくる。一度アレルギーを作ってしまうと、繰り返しダニや花粉を吸いこむことでアレルギーが加速していきます。どこかに逃げれば治るかもしれませんが、そうもいきません。アレルギーは治すことが難しい、不治の病だったわけです。

※ちなみに沖縄にはスギがないので、スギの花粉症はありません。北海道も少ないです。

スギのアレルギーは成人に多いので、毎年ひどい目にあう人もいますよね。スギ花粉の時期にはくしゃみが出たり、目が痒くなったり、つらいですよね。QOLを大きく落としてしまいます。

ダニアレルギーは普段は症状が出ません。ですが、ダニアレルギーの方の方が問題が大きいのです。ダニは家の中にいますので、1年中それを吸うことになります。症状は強く出ませんが、アレルギーによる炎症はずっと続きます。弱い反応が長く続くのを慢性炎症と呼びますが、長期にわたる炎症が呼吸器粘膜を痛めてしまいます。

ダニアレルギーで鼻の粘膜が変性してしまっているお子さんは、見た目にも分かります。普通の粘膜は血流が豊富で赤みがありますが、変性した粘膜は白っぽくなります。正常の抵抗力を失ってしまうのです。すると、鼻かぜを引いただけでひどくなるし、すぐに副鼻腔炎や中耳炎を起こすし、喘息の原因にもなってしまいます。ダニアレルギーは避けにくいし、やっかいなアレルギーなんです。

一部のウイルスは、感染することでアレルギー反応を強化します。 ここ
※論文中RVはライノウイルス(鼻かぜウイルス)のことです。

鼻かぜウイルスはアレルギーのある粘膜を狙い撃ちにして、ますますアレルギー性の炎症を起こすように進化してきたウイルスです。
風邪が流行しだすと、アレルギーがある子がバタバタと熱が出たり、ひどい鼻汁、咳嗽が出たりしますね。



これまで、こういった症状は薬で抑えるしかありませんでした。抗アレルギー薬はたくさんの種類が出ています。ずっと飲んでいる子も多いのでは?
中には何年も飲んでいる子がいて、びっくりすることがあります。飲まないと不安だって言われる方も。
※これって薬依存症ですね。

ところが、薬を飲んでアレルギーが治るか?というと、治りません。飲まなくなれば一緒です。また、抗アレルギー薬って正直言ってそんなに効果ないですよね。
ないよりはマシ、ってレベルだとわたしは思っています。

※なお、アレルギーには内服より点鼻の方が強く効きます。ですので、当院ではどちらかというと点鼻をお勧めするのですが、使用感が悪くって続けにくいみたいですね。

さらに、問題なのは、薬を服用していて、多少症状がなくなっても、アレルギーの炎症そのものは起こっています。ですので、長期的には粘膜の変性を抑えることはできません。

呼吸は死ぬまで続くものです。何十年もダニアレルギーが続くと、気管支の粘膜が変性してしまい、慢性肺疾患の原因となってしまいます。つまり呼吸がしにくくなってしまいます。ずっと昔からアレルギーがあった人が、いま咳喘息とか慢性の咳嗽を起こしたりで苦しんでいます。

ということで、やっぱりアレルギーはないに越したことはない、とわたしは思います。



近年になって開発されたのが舌下免疫療法です。3年くらい行えば、アレルギー反応そのものを抑えることができるようになります。つまり体質を変えることができるようになったということです。

きっちり続けると、薬を飲むよりもはるかに効果があります。
※個人差もあり、効果が弱い方もいます。

薬に関する情報はメーカーのHPを参照してください。
 スギの免疫療法は ここ
 ダニの免疫療法は ここ


なお、体質を変えても、それが一生続くというわけではありません。概ね3年行うと5年程度の効果です。あまりに強く再発すれば、再度免疫療法を行えば良いと思います。

何よりもいったん体質を変えてしまうと、薬を飲む手間もなくなるし、日常生活のQOLが上がる、長い目で見ると呼吸器を守ることにもつながります。



わたしはは薬嫌いって言われていますが、効かない薬が嫌いなだけです。
風邪薬とかアレルギーの薬って、正直言ってあまり効きませんお子さんの将来を変えることはできません。抗生物質はほとんどの場合有害です。

ですが、舌下免疫の効果は素晴らしいと思います。
手間はかかりますが、とっても良い治療だと思いますよ。
当院では積極的に勧めています。


以下に、実際のやり方を書いておきます。

1、まず、現在の症状がアレルギーによるものかを確定する必要があります。病歴も大事ですが、最初に血液検査を行ってアレルギーの数値を見ておきます。

2、次に来院してもらって、スギなら2000単位、ダニなら3300単位の弱い薬剤で開始します。薬を舌と前歯の間(舌の下)に入れて、1分間まってから飲み込みます。その後5分間は飲食しないでください。

3、最初に院内で強い症状が出ないのを確認すれば、処方で1週間分の薬を処方します。お家で1週間続けてください。

4、1週間後に来院してもらい、スギなら5000単位、ダニなら10000単位の濃い薬剤を投与してみます。ダニの場合は痒みが出やすいですが、耐えられるくらいならそのまま続けてもらいます。痒みがつらいなら弱い薬剤を数週間続けて、再度強い薬剤を試してみます。1~2ヵ月で免疫ができてくるために、痒みも軽減してきます。

5、濃い薬剤ができるようになってから、1~2週間後に受診して頂き、経過を見ます。続けられるようなら4週間分投与します。その後1~2回来院して頂き、以後は定期的な診察は不要で、28日毎に薬剤を取りに来ていただくだけで大丈夫です。年に2回(春休み、夏休み)には受診してください。


注意点

・ごく稀ですが強いアレルギー反応(アナフィラキシー)が出現します。今までの報告を見ると、服用後にランニングをして全身のじんましんが出た例があるようです。強い運動はアレルギーを起こしやすくするので、開始して1ヵ月くらいは、服用後の強い運動を避けてください。子どもでは安全性は高いと思いますが念のため経過観察を行ってください。

・ダニの免疫療法はほとんど痒みを伴います。痒いほど、アレルギーを持っているということです。頑張って続けると症状が出なくなってきます。

・高い熱や体調が悪いときには止めても構いません。体調がよくなってから再開してください。

・できるだけ長く、最低でも3年間続けることをお勧めします。早く止めると、すぐに再発してしまいます。

・その日服用を忘れたなら、翌日2回服用してください。

・最低3年間くらい続けてください。ちゃんとやってあげればお子さんの人生が少し良いものになりますよ。頑張って続けてあげてください。



Top